K 78ページの酌酒与裴迪の4列目 (NHK 漢詩紀行、監修:石川忠久・著者:牧角悦子)

「朱門先達笑弾冠」の通釈が少しおかしく思います。

「おかしな付き合い」ではなく、文字通りの意訳が必要に思います。

即ち、先に出世した高官は 「友人同志が互いに推挙」など ありえないと笑う、=「頼るべく友人も つれないものだ」が

適切だと思います。

尚、79ページに記されている王吉・貢禹は 後漢ではなく 前漢の間違いです。

 今だから言える 当ページを開設するに至った理由と経緯

 

 

「酌酒与裴迪」、王維

 

                この漢詩の読み

酌酒与君君自寛       酒をくんで 君にあたう 君みずから ゆるウセヨ

人情飜覆似波瀾       にんじょうノはんぷく はらんニにタリ

白首相知猶按剣       はくしゅノそうちスラ なお けんヲあんジ

朱門先達笑弾冠       しゅもんノせんだつワ だんかんヲ笑う

草色全経細雨湿       そうしょく まったくさいうヲへテ うるおイ

花枝欲動春風寒       かし うごカントほっしテ しゅんぷう さむシ

世事浮雲何足問       せいじ ふうん なんゾとうニたラン

不如高臥且加飡       しかず こうがシテ しばらく さんヲくわえンニワ

 

 

この漢詩の

酒を酌んで君に与えよう さあ気持ちを和らげたまえ

人の気持ちと言うものは、大波のように転覆するものだ

白髪頭になるまでの長い付き合いにしてなお、不信感で剣の柄に手をかける

高官屋敷に住む先輩は「友人同士が互いに推挙など有り得ない」と笑う

春に芽吹いた草々は 細かな雨を一面に受けて 潤っているけれども

花をつけたばかりの枝は、風にそよごうと思っても、まだ春風が冷たい

世の中の事は 浮雲のように定めの無いもの 問題にすることは無い

高尚な心を持って隠棲し 飯でも食べているほうが良いのだよ

 

弾冠=冠のちりを払って仕官の用意をすること。


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